ワーママのミカタ

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【学力の経済学】読書後の学びメモ。

 
読書後の雑感とともに
 
読書後の個人的感想です。
 
 
 
「教育にエビデンスを」という
一貫した視点から分析される
論点はどれも興味深かった。
 
ただし、個人的感想として、
エビデンスも大事だが、
経験則も大事よね、
やっぱり両方の視点を
もちあわせていることが最強、
という結論に至った。
 
だからOママのような
教育専門家の提言も、
エビデンスから導き出される
教育経済学者の著者が提言する
ことも自分にとって
両方いいとこどりするのが、
子育てにはいいのではないかと
思った次第です。
 
以下、本著の雑感。  
 
「教育にいつ投資すべきか」という疑問に対して、研究と多くの経済学者の一致した意見から幼児教育がもっともリターン(収益率)が高いことがわかり、研究結果でもデータが立証している。
 
ただ、これはアメリカの研究であり、日本でそのまま結論があてはめられるのかについては、検証されておらず、疑問残る。
 
そして、幼児教育で、週5日2時間半の読み書きをしてもIQで差がつくのは、グラフ(p85図17)をみると4〜5才をピークに徐々に差がつまり、8才で差が消滅してしまうという結果も印象に残った。
 
4〜5才での早期教育は、その時点ではIQに差がつくが、小学校入学後の小学2年生を堺に、ほぼ差がなくなってしまうということである。
 
この結果は、幼児教育を推し進めるうえで、見逃してはならないデータだと感じる。
 
このことは、読み書きに代表される幼児教育(先取り教育)を4〜5才の時点で、時間と労力をつぎ込む価値があるのかを親は考えておく必要がある。
 
この研究では、質の高いプログラムは、その後の学歴、年収などの面で差がつくという結果にもつながっているので、幼児教育そのものを否定することではないが、子どものどの能力を伸ばしていくかを考えたとき、限られた幼児期に親がどの部分に注力すべきかは、親自身のぶれない視点が必要だということ。
 
また、著者は、非認知能力の重要性を説いており、これは一般に「生きる力」といわれるようなものである(注:「生きる力」とは、1996年に文部省(現文部科学省)が、問題解決能力や自制心、協調性、思いやり、豊かな人間性などの全人的な資質や能力を指す言葉として用いた)。
 
特に非認知能力のうち、「自制心」「やり抜く力」をあげている。
 
自制心とはSelf-control。意志力が強いこと、精神力が強いこと、と関連する。
 
Self-controlは障害者福祉の分野でも研究されており、それらの知見も参考にしたいところ。
 
「やり抜く力」はダックワース准教授の言葉を借りると「非常に遠い先にあるゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けること」(p91)。
 
著書の中で、幼児教育の重要性を示しながらも、幼児期にこの能力をどのように伸ばすかについて、あまり言及がなかった点は残念であり、消化不良。これは、現場経験が少ない経済教育学者の限界か。
 
これらのことについては、やはり、子育ての専門家などの提言も参考にしたいところ。
 
著者は、自制心を鍛えるためには、「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」ことが有効であるとする研究結果を示しているが、幼児に果たしてそれができるのか、もし、できるのならばどのような手助けが必要かに言及していないのが残念。
 
一方の「やりぬく力」については、「心のもちよう」が大切であるとし、「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって後天的に伸ばすことができる」ということを信じる子どもは「やり抜く力」が強く、実験で、そのようなメッセージを伝えられた子どもたちは、成績も改善されたという結果が出ている(p94)。
 
このことは、子どもへの声かけや心のもちようをどのように示すかというときのヒントになると感じた。
 
要は、ステレオタイプを植え付けてはいけない。マイナスの声掛けではなくプラスの声掛けが必要ということ。  
 
ただし、プラスの声掛けの際に留意すべき点として、「褒めて育ててはいけない」との解釈との兼ね合いにも留意すべき。    
 
 
 
原因と結果、すなわち因果関係を明らかにすること。
 
出来事の関係性を示すときによく「相関関係」と「因果関係」という言葉が用いられるが、これははっきりと区別して解釈しなければならない。
 
時に混同され、誤った解釈がなされる場合がある。
 
「因果関係」とは「Aという原因によってBという結果が生じた」
「相関関係」とは、「AとBが同時に起こっている」ことを単に意味している。  
 
一例として、学力と家庭環境の関係性について「親の年収や学歴が低くても学力が高い児童の特徴は、家庭で読書していること」という文部科学省の学力テストの結果を→「子どもに読書させることが重要だ」という報道は正しくはない。
 
「読書する」ことが原因で「学力が高くなる」という結果がもたらされているかは、データからははっきりしていない。また、読書にも学力にも影響するような「第三の要因」について考慮されていないため。  
 
 
ご褒美で釣ってもよいとは
 
ご褒美で釣っていけないのか?に対する著者の答えは→ご褒美で釣ってもいい。
 
人間は、「今」と「将来」を比べると、今目の前にある利益や満足の方を優先しがちな好みをもっている(これを経済用語で双曲割引という)。それゆえ、遠い将来のことなら冷静に考えて賢い選択ができても、近い将来のことだと、たとえ小さくともすぐに得られる満足を大切にしてしまう。(p30)
 
「目先の利益や満足をつい優先してしまう」ということは、裏を返して、「眼の前にご褒美をぶら下げられると、今、勉強することの利益や満足が高まり、それを優先する」と著者は解説している。
 
こどもは目先の利益や満足につられてしまう、だから、ご褒美で釣る方法はあり、という論。  
 
効果的なご褒美
 
ご褒美は、「テストでよい点を取ればご褒美」よりも「本を読んだらご褒美」の方が効果的。
 
「テストの点数」などのこの先の遠い将来のアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」など今の近い将来へのインプットが重要である。
 
「テストの点数」という漠然としたアウトプットが目標である場合、どうすれば成績をあげられるのかという方法を教え導いてくれる人、存在が必要。
 
こどもに任せていてもこどもはその道筋を描けない。ご褒美の与え方にも注意が必要。このあたりまで読み込まないと、間違って解釈される恐れあり。
 
長くなりましたので以上にします。
ここまでお読みいただいた方、ありがとうございます。