ワーママのミカタ

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【学力の経済学】人生の成功において重要な能力。

 
幼児教育の重要性
 
つづきです。
 
 
 
幼児教育の重要性を示す興味深いデータとして、シカゴ大ヘックマン教授らの研究結果が紹介されています。
 
ヘックマン教授らは、低所得者層のアフリカ系アメリカ人3〜4才のこどもを対象に「質の高い就学前教育」を受けたこどもたちとそうでないこどもたちを約40年間の追跡調査をした研究として、今でも高く評価されています。
 
質の高い就学前プログラムとは、具体的に
  • 幼稚園の先生は修士号以上の学位をもち児童心理学の専門家
  • こども6人を先生1人が担当する少人数制
  • 週5日、午前中2時間半の読み書き、歌などのレッスン
  • 家庭支援のための1週間に1度の家庭訪問
このような質の高いプログラムを受けたこどもたちは、そうでないこどもたちと比較して、
  • 6才時点でのIQが高い
  • 19才時点での高校卒業率が高い
  • 27才時点での持ち家率が高い
  • 40才時点での所得が高い
  • 40才時点での逮捕率が低い
“つまり、入学時点でのIQが高かっただけではなく、その後の人生において、学歴が高く、雇用や経済的な環境が安定しており、反社会的な行為に及ぶ確率も低かった”ことを指摘しています。(p78-p82) 
 
勉強だけが大事なのか
 
ただ、この結果のもうひとつの興味深い点は、小学校入学後のIQや学力テストの成績は上昇したが、この効果はごく短期的なものだったという点です。
 
IQの差は、小学校入学前(4〜5才ごろ)にはそれなりに大きかったものの、小学校入学(6才)とともに小さくなり、ついに8才前後で差がなくなってしまっています。”(p84)
 
つまり、IQや学力テストで示される認知能力の効果は8才頃で失われ、決して長期にわたって持続するのもではなかった、ということも報告されています。
 
一方で、学歴・年収・雇用などの面では長期的に大きな影響をもたらしたことも示されています。著者は、
このプロブラムによってこどもたちを変えたものは、「非認知スキル」または「非認知能力」であり、(略)将来の収入、学歴や就業形態などの労働市場における成果にも大きく影響することが明らかになってきた”(p86)
 
前出のヘックマン教授らは、学力テストでは計測することができない非認知能力が人生の成功において、極めて重要であることを強調している”(p87)
 
といっています。
 
じゃあ、その非認知スキル(非認知能力)ってなに?というのが気になります。
 
 
人生の成功において重要である能力
  
非認知能力とは、気質や性格のようなものであり、
  • 自分に対する自信、やり抜く力
  • やる気、意欲
  • 忍耐、根気
  • 意志力、精神力、自制心
  • メタ認知、理解度を把握する
  • リーダーシップ、社会性
  • 創造性
  • 好奇心、協調性、誠実
(p87の図より抜粋)
などをあげています。
 
その上で、著者はこれらのうち、人生の成功のために特に重要な能力として、自制心」と「やり抜く力です。
 
ここで著者が重要と定義する「非認知能力」とは、
学歴・年収・雇用などの面で、子どもの人生に長期にわたる因果関係を持ち教育やトレーニングによって鍛えて伸ばせることが、これまでの研究のなかで明らかになっているもの”です。(p89)
 
「やり抜く力」ついて、ペンシルバニア大学のダックワース准教授は「非常に遠い先にあるゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けることができる気質」と定義しています。(p94)
また、ダックワース准教授は、「やり抜く力」が高い人はどんな状況でも成功する確率が高かったことを明らかにしています。(ダックワース准教授TED「成功のカギはやり抜く力」)
 
著者が著書の中で強調していることは、非認知能力の重要性であり、“非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要であることが多くの研究で示されている”ということです。(p97)